歴史に根ざした製造技術の継承と発展
京生麩 志場商店は、江戸時代後期の創業以来、京都・壬生の地で4代にわたり京生麩作りの伝統を受け継いできた老舗専門店です。半世紀以上の歳月を経て培われた職人の技術は、原材料の選定から最終製品の出荷まで、全工程において精密な管理と卓越した技術力を発揮しています。製造プロセスでは、グルテンと餅粉の原材料混合において、よもぎ麩にはよもぎを、あわ麩には粟を加えるなど、各商品の特性に応じた細やかな配合調整が行われています。
同社の品質管理体制は、原材料受け入れ時の目視検査から始まり、手作業による常時の目視検査、その日の生地の硬さに応じた茹で時間の調整、職人の経験による計量とカット、木型での精密な成型技術まで、16工程にわたる厳格な製造管理を実施しています。特に、柔らかい生地を型にはめて真っすぐに成型する技術や、蒸し工程での温度・時間管理など、機械では代替できない職人の感覚と技術が、同社の生麩の品質を支える重要な要素となっています。
料理界との連携による商品革新
京生麩 志場商店は、京都の料理人との密接な協働関係を基盤として、継続的な商品開発と品質向上に取り組んでいます。関わりのある京都の料理人からの具体的な要望や提案に応える形で、七味、からし、くりといった新商品の開発を実現し、京都の食文化の奥行きと多様性を反映した商品ラインナップを構築しています。これらの商品は、京色Fuji屋での車海老と賀茂茄子と生麩の揚げ出し、叶夢での生麩の餡かけ焼きそばや生麩の抹茶アイスパフェなど、プロの料理人による創意工夫を凝らした料理に活用されています。
商品展開においては、伝統的な生麩まんじゅうを7種類の色とりどりの生地と餡で展開し、よもぎ、黒ごま、南瓜、抹茶、ほうじ茶、桜紅、柚子の各種類において、視覚的な美しさと味覚の多様性を両立させています。また、棒麩や花麩の各種サイズでの製造、進物用化粧箱の提供など、業務用から贈答用まで多様なニーズに対応する総合的な商品展開を実現しています。
食文化継承のための教育普及事業
京生麩 志場商店は、生麩文化の継承と普及を目的とした教育事業にも積極的に取り組んでいます。京の宿綿善旅館での生麩づくり体験では、炙り餅風とあんこを包んだおまんじゅうの製作を通じて、参加者が生麩作りの工程を直接体験できる機会を提供しています。同旅館の毎年恒例の天麩羅ナイトでは、従来の生麩田楽に加えて新たな生麩料理を提案し、生麩の多様な活用方法と調理技術を実演しています。
また、生麩料理専門店「shibaF」の運営を通じて、生麩をより身近で馴染みのある食材にするという使命の実現に向けた取り組みを展開しています。同専門店では、生麩の可能性を探求した革新的な料理やデザートの開発・提供により、従来の生麩の概念を超えた新しい食体験を創造し、若い世代を含む幅広い層への生麩文化の普及を図っています。
健康志向市場への対応と全国販売戦略
京生麩 志場商店の生麩は、室町時代に中国から伝来し、肉食を禁じられていた僧侶の重要なタンパク源として活用されてきた歴史的背景を持つ伝統食材です。現代の健康志向の高まりに対応し、低カロリーで消化吸収が良い健康食品として、栄養価が高くダイエットにも適した植物性タンパク質を提供しています。生麩特有のモチモチとみずみずしくツルっとした食感は、普通のおまんじゅうでは味わえない独特の特徴を持ち、噛むにつれて上品な旨味と風味が最後まで口の中に残る高品質な食体験を実現しています。
販売戦略においては、オンラインショップ「志屋」を通じた全国への販売展開を行い、手作りならではの穴あきや空気の入った訳あり商品を初回限定で提供するなど、多くの人に生麩を試してもらう機会を創出しています。厳選したグルテンやもち米などの原材料へのこだわりと、送料無料での初回限定セット販売により、伝統食材の現代的な価値を全国の消費者に提案し、生麩文化の普及拡大に貢献しています。


